クローバーの「ふらんす菓子」の心は、日本の伝統文化の粋ともいえる茶道の心に通ずるものです。菓子づくりにいそしむパティシエの無駄のない清楚な手さばきは、茶道の“お手前”にも似ていて、邪念のない清水のような心は“茶の湯”の精神そのものです。
しかしクローバーが求めつづけているものは秀吉が大坂城の山里丸に作った黄金の茶室のような、豪華絢爛なそれではなく、利休の草庵である妙喜庵待庵に見られるような、常識を越えた極限の美意識であり、造形美なのです。南方録(利休の高弟、南坊宗啓の茶書)に「火ヲ起コシ、湯ヲ沸カシ、茶ヲ喫スルマデノ事ナリ。他事アルベカラズ。」とあります。端正なまでに簡略化された二畳の草庵に凝縮される、凛とした空気と、他事アルベカラズという一途な澄んだ心…、そこで初めて客に対する一期一会の精神が生まれるのでしょう。それは茶の湯の世界に止まらず、あらゆる日本人の文化や生活様式に浸透し、時代を越えて伝えられている真理であり、同時にクローバーの「ふらんす菓子」の心でもあるわけです。